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2009.12.28

<雑>ある判決を読んで

 ある裁判の判決に対するボクのコメントが載っている記事を紹介します。

 指定管理者同士が訴訟、制度の機能不全に指摘も/横浜(神奈川新聞2009年12月21日)

 指定管理者というのは公共施設の管理運営を行なう民間組織のことを言います。横浜市の大倉山記念館は、二つのNPO法人が共同で管理運営していました。その2法人が争うという前代未聞の裁判で、このほど横浜地方裁判所が判決を出したのです。全国紙はどこも追いかけていなかったようで、ほとんど報道されなかったのですが、判決内容を読んでびっくり・・・関係者には失礼な言い方ですが、すごくおもしろいのです。
 裁判・判決は論文と似ています。まず両者の争う事実について証拠や証言を踏まえて、裁判所として事実認定をます。そしてし、それに基づいて、争点に対する裁判所の判断を示します。両者を整理統合して示した判決です。ボクがコメントした判決には、2法人の「出会いから破局まで」が事実認定としてばっちり書いてありました。
 そのうちの「出会い」の危うさを指摘したのが、この新聞記事です。裁判の直接のきっかけはこの施設の人件費の配分をめぐるものでしたが、判決は、市による2法人の指定取消しにまで言及していました。実際には2法人はまだ別れないで共同で管理運営しているので、どちらも別れたい(指定管理者を辞めたい)なんて主張していません。
 当事者が主張していないにもかかわらず、裁判所が破局を宣告し引導を渡すのは、きわめて異例のことです。力をあわせて管理運営するはずの2法人が、裁判を引き起こしたことへの不信感もあったでしょう。それだけでなく、ボクがコメントしたような「施設の私物化」とも思える事実が散見されたため、指定管理者への不信感は決定的なものになったように思われます。
 指定管理者制度やNPOがダメなのではなく、そのメンテナンス(この場合は、特に「劣化」の補修)を怠ってきたことが問われるべきなのです。市は指定管理者に任せきりにするのではなく、メンテナンスの役割を担わなければならないのでは?と判決を読みながら思いました。

2009.12.26

<医>ミッドレベル・プロバイダー

 YHさんのリクエストに答えて、ミッドレベル・プロバーダーについてコメントします。
 これは朝日新聞が12月16・17日と連載し、18日に関連記事を掲載したもので、16日の記事には以下のような語句解説が載っています。ちなみに、NPはナースプラクティショナー、PAはフィジカルプラクティショナーの略です。

ミッドレベル・プロバイダー
 
手術のときの開閉腹や助手、病気の治療、薬の処方、麻酔など、日本では医師法で医師しかできない仕事の一部が認められている医療職の総称。NPやPA、看護麻酔師などが該当する。日本では正式名称はまだないが、「非医師診療師」などとも言われる。修士課程で2~3年学んだ後、国家試験に合格後に州に免許を申請する。NPは1~3年ごと、PAは6年ごとに更新が必要。看護麻酔師は100年以上の歴史を持つ。NPとPAはともに1960年代後半から養成が始まった。

 この記事がリードで「医師を増やすほかに医師不足の解決法はないのか」と問いかけていますが、ミッドレベル・プロバイダーによる医師偏在の改善にYHさんも期待しています。医療現場における役割分担は必要不可欠であり、より高度な診断・治療や研究、教育等を医師が担い、軽易な医療をミッドレベル・プロバイダーが担うことは問題解決方法の一つといえるかもしれませんね。18日の記事にあるように、厚生労働省のチーム医療の推進に関する検討会でも議論が行われているようです(検討会の議事録、資料等はこちらから)。
 コメント欄にボクが書いたように、あらゆることが複雑化した現代社会では、中間的な機能が重要になります。取り上げるべき問題を整理して、人、資金、物、情報等の資源の差配をするのが「中間」の役割です。医療において中間的機能を果たすのがミッドレベル・プロバイダーで、NPやPAの導入にボクも期待をしています。
コメントでmidwife(助産士)に言及したのも同じ趣旨です。通常分娩は助産士が行い、リスクが高い場合は産科医に委ねるという役割分担は以前から行われ(我が子も助産院で生まれましたが、万が一の場合の高度医療機関との連携が用意されていました)、産科医不足が深刻化する中で、その意義が見直されつつあります。
 ただし、ミッドレベル・プロバイダー導入には課題が多いと思われます。まずは開業医の反発が予想されます。ドラマや映画のシーンによくあるような、地域の医師が近所の患者さんの血圧をはかりつつ簡単な問診・世間話をする・・・ことを
ミッドレベル・プロバイダーが担うようになれば、開業医の仕事は減るかもしれません。また、それは、より困難な仕事ばかりを医師が担うことになることも意味します。「雑務」からの解放を喜び専門性を発揮する医師がいる一方で、負担感を募らせる医師もいるかもしれません。ミッドレベル・プロバイダーという新規参入者を、既存の市場で働く人たちがどう受け止めるかがポイントです。
 他にもいくつかの問題点が考えられますが、長くなってしまったので、この先は皆さん自身が考えてみてくださいね。たとえば、医療サービスを受ける側の課題もありますが、それは何でしょうか?
 
なお、米国ではNAが14万人、PAが8万人いるそうです。数字だけをみると医師不足は解消しそうですが、医師偏在は解消しないかもしれません。ミッドレベル・プロバイダーについても働く場所を自由に選べるならば、医師と同じように都市に集中するかもしれないからです。医療過疎地域で働く人をどのように確保していくのか?この難問をそのままにして、ミッドレベル・プロバイダーに過度な期待をすべきではないかも・・・とボクは考えます。

2009.12.21

<社>社会的排除と社会的包摂

 今日で冬期講習が終わります。限られた時間の中で、どれだけのことを正確に伝えられたかわからないので、特に重要なテーマについてブログで補足します。
 「社会的包摂は、社会的排除という問題解決へのアプローチを指す」と指摘する『社会的包摂手法による地域の再生』(財団法人「神戸都市問題研究所」)は、英国のAlan Kayの言葉を引用して、以下のように社会的排除について説明しています。

 「端的に言えば、失業、低スキル、低所得、劣悪な住宅環境、犯罪率の高い環境、健康状態の悪化、家族の崩壊といった連鎖性の諸問題を個人や地域が複数抱えた場合に起こりがちである」。したがって、社会的排除は複数の相互関係にある要素により起こり得るのだが、それらは以下のように整理できる。
●経済的要素:
 たとえばスキルの欠如により主流の雇用のチャンスがない。給与条件が良くない職で低所得、そのため経済的に上昇することが不可能で、貧困の下降サイクルに捕われ、労働市場で差別を受け、社会的排除が益々深まる。
●社会的要素:
 犯罪率の高い環境で生活するためコミュニティの一体感に欠け、結果的には隣人に不信感を持ち、家族崩壊により周囲の目が届かない10 代の子供たちがストリートをうろつき、地域住民が出会い交流できるようなサービスとチャンスが欠如し、健康悪化により人々が引きこもりがちで、それゆえ疎外が深まり、特定のグループに対する偏見がさらに彼らの社会的排除を生む。
●地理的/構造的:
 辺鄙な場所にあるため主なサービスが受けらず、地方の人口減少により人口密度が低下し、サービスのレベルが維持できなくなり、そういった地域は衰退するのでさらに住民が疎外され、「沈下した」住宅群には悪い風評が立ち、就職が難しくなり、「より良い」地域への流出が始まる。

 これを読めば、日本社会でも社会的排除が深刻化していることは明らかです。これを解決するため社会的包摂として何に取り組むべきか?そんな難問を考えさせるのは、受験生には難しすぎるでしょう。しかし、「誰もが自分のことしか考えてこなかった」という「わたし自身」や「われわれ」の問題に気づくことはできると思います。受験のときは自分のことで「いっぱい、いっぱい」かもしれませんが、大学や社会に進んだときに社会的排除という難問にどう向き合っていくのか、将来の宿題としてとらえてください。
 なお、『社会的排除-参加の欠如・不確かな帰属』(岩田正美・有斐閣)に関する書評についてもリンクをはっておきます。短い文章なので読み、何が問題になっているのかくらいは理解しておきましょう。

 明日からボクは「社会復帰」して、やり残したNPOの仕事を一つずつ片づけなければなりません。ブログも忘れずに更新していく予定です。受験生の皆さんも、健康に気をつけてがんばってください!

2009.12.18

ありあわせの素材でつくる

 お茶の水校での冬期講習は昨日終わりました。受講生の皆さん、お疲れさまでした。今日からは横浜校での講習が始まります。
 講習期間中はいろいろな質問を受けました。そうした質問でよくあるのが、ネタ(情報)の使い方です。
 授業でも強調したように、論文試験の評価は知識の量で決まるわけではありません。知識は大学に入ってから習得すれば良く、問われるのは知識を料理する力(基礎的な理解力、論理的思考力、主体的な判断力、表現力)の有無です。
 にわかじこみの知識を無理やり答案に書き込んでも浮くだけです。仮にネタ集のようなものを利用するとしても、自分の解答に使える素材かどうかを吟味するようにしましょう。素材にこだわるより、ありあわせのもので何とか解答を仕上げる要領の良さが必要です。
 今日は早起きをして、久しぶりに家族のための弁当を作りました。まず、制限時間(30分程度)と冷蔵庫の中にあるものを確認します。そして、何よりも自分の力量をわきまえて、無理をせず、できる範囲のものを急いで作りました。ちなみに、今日の弁当はこんな感じです。

Lunch☆今日の献立(写真左から)
 サツマイモとレーズンの煮物、豚肉のしょうが焼き、さつま揚げとにんじんの煮物、小松菜のゴマ和え

 煮物はかぶりましたが、一応バリエーションと色合い(黄、緑、橙など)にも配慮しました。冷凍食品は使わず、さつま揚げ以外は手づくりです。もちろんネタ集(レシピ)は使わず、味つけも適当です。おいしかったかどうかは、添削者(家族)の評価待ちです。
 こんな感じの弁当をつくりながら、「論文と料理は似ているなあ」と改めて思いました。皆さんの頭の中にも「冷蔵庫」があって、解答に使える素材(知識や経験)が保存されているはずです。それらをうまく活用して、制限時間内に料理(答案)を仕上げられるよう練習を続けてくださいね。

 

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2009.12.15

このblogの使い方

 SOS論文教室へ、ようこそ!
 このblogは論文試験対策に悩む人たちのために開設したものです。「SOS」というのは救難信号であり、ピンチのときに読んでくださいという趣旨ですが、駿台・奥津・茂樹の頭文字をとったものでもあります。
 いろいろな記事を載せていますが、件数が多いので、カテゴリーを活用して、読みたい記事にアクセスしてください。迷惑コメントが多すぎるのでコメント欄は封鎖していますが、このページだけコメントを受け付けています。論文試験に関する質問があったら、駿台生に限らずどーぞ。ただし、内容を確認してから表示する設定にしているので、コメント掲載までは時間がかかります。
 なお、以下のblogはボクの授業の受講生専用なので、ユーザー名とパスワードがないとアクセスできません。ご了解ください。

 SOS文系論文問題集 http://sosronbun.cocolog-nifty.com/keio/

 SOS医系論文問題集 http://sosronbun.cocolog-nifty.com/medical/

採点する側の嘆き

 昨日から駿台の冬期講習(慶大対策論文・法学部)が始まりました。ボクの授業を初めて受ける人もいるようなので、画一的なマニュアルに依存したり、ネタ本のような情報に依存するのではなく、出題に応じて自分の頭で考える必要性を強調しました。そのときに引用したのが、ある大学の小論文試験担当者の以下のようなコメントです(ちなみに、この大学は論文試験の出題意図と採点基準を公表しています →リンク )。

 小論文対策、小論文指導が画一化しているのではないだろうか。時事問題におけるキーワードだけを取り上げ、模範解答の形式を覚えているだけのように感じられる。本当に解答者が自分の意見、考えとして記述しているのかどうか。受け売りの言葉でなく、拙くても自分自身の言葉で記述してほしい。

-下関市立大学「平成21年度 一般選抜【前期日程】小論文 出題の意図と答案の傾向」より-

 まさに「わが意を得たり」のコメントです。「画一化」「模範解答」というのはマニュアル依存を指しているのでしょう。もっともメジャーなマニュアルは、論文の1段落が要約で、2段落が「確かに~」、3段落が「しかし~」という構成をとるようです。そういう答案が多くあるのは、ちょっと気味が悪いですよね。また、「キーワード」「受け売りの言葉」からは、受験生がネタに依存していることが推測されます。

 受験までまだ2ヶ月もあるのですから、イージーな対策に走り大学側が嘆くような答案にならないよう、もっともっと「地力」をつけていきましょう!

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