<医>コラム 子どもの「長期脳死」
現在、国会で脳死・臓器移植法の改正を審議しています。最大の焦点は子どもの脳死を認めるか否かです。そして、仮に子どもの脳死を認める場合、どのような方法が望ましいかも議論されています。論文試験や面接試験で必出のテーマなので、医学部を受験する人は今後の審議の成り行きに注目しましょう。
そんな中で、あるTV番組で子どもの「長期脳死」を取り上げていました。医系論文の公開授業で話したように、大人の脳死と子どもの脳死は同じに扱えない理由の一つにあげられるのが、この「長期脳死」です。
TV番組では出産直後に脳死になった赤ちゃんのことを取り上げていました。その子は1歳5ヶ月まで脳死状態のまま生き続けたそうです。出産時に3kgだった体重は10kgに増え、髪の毛も伸びて、歯まで生え始めていました。もちろん脳死状態ですから呼びかけに答えるわけでもありません。しかし、家族さんにとっては、脳死だからといってその子が死んでいるという感覚はありません。確かに生きていたのです。
こうした「長期脳死」の子どもは約60人いるとも報道されています。家族にとっては、国会で審議中のA案(子どもを含めて脳死を一律に人の死と認める案)は、生きている我が子を有無を言わせず死者と決めつけるものであり、とても受け入れることはできないでしょう。これは、生死の判断というものが科学的であるだけではなく、社会的でもあることを物語っています。仮に子どもの脳死を認めるのならば、家族の同意は絶対に欠かせない条件です。
しかし、家族が子どもの最善の利益を考え、それに基づき行動するとは限りません。子どもに対する虐待があった場合は、第三者的な機関が家族による代諾の代行をしなければならない場合もあるでしょう。そのような方法を提示したのがD案です。
これがもっとも穏当な案とされていますが、気をつけなければならない点もあります。それは、家族の「みとり」を最大限に尊重して、子どもの脳死・臓器移植を迫らないことです。「長期脳死」で生き続ける子どもの親に、脳死・臓器移植の判断を求めること自体が、時にはきわめて残酷な行為であることに思いを馳せてください。



