« こうもりとコウモリ | トップページ | 議論を踏まえて、自由に論じる »

2007.07.25

なまずの悩み

 昨日のコウモリが早速恩返しになまずを持ってきてくれた…という話ではありません。ある自治体で作成した「防災シール」をめぐる話です。
 最近は体感不安の増大から防災への関心が高まっているので、個人情報保護に関するボクの講演では、必ず災害時要援護者情報の共有化問題を取り上げます。中越沖地震もあったので、今日の午後の講演でも取り上げる予定です。
 「災害時要援護者」とは、要介護者、障がい者など、地震や水害等の災害時に自力では避難が困難な災害弱者のことです。とりわけ地震など広範かつ大規模な災害時には役所だけでは対応困難なため、自主防災組織という地域組織が避難支援・救助を担うことになります。そのためには、これらの組織が災害弱者の所在を日常的に把握していなければなりません。
 ところが、個人情報保護が壁になって、災害弱者に関する情報の把握・共有化が進んでいないのです。そもそも個人情報保護制度は個人情報の利用と保護とを調整するためのものですが、新しい仕組みのため一般の理解が進まず、さまざまな「過剰反応」(過度な保護による利用の妨げ)を生み出しています。この問題は「過剰反応」の典型例です。
 個人情報保護に配慮しつつ共有化をどう進めていくか?いま、この難問に取り組むため、ボクが主任研究員をつとめるNPOは共同募金会の補助金をいただき、神奈川県内の実態調査を始めたところです。そんな中で「発見」したのが、なまずのイラスト入りの「防災シール」です。災害弱者の存在を地域住民に知らせるために、この自治体では「防災シール」の活用を考えました。これならば、災害弱者リストの共有化という難事を避けることができます。
 拍手パチパチの良案のようにも思えますが、よーく考えると問題ありといわざるを得ません。要介護者、障がい者の世帯は「防災シール」を軒先に貼っておけば、災害時に地域の人たちが安否確認や避難支援をしてくれると考え安心かもしれません。しかし、そうした善意の人たちばかりなのでしょうか?災害弱者=犯罪弱者であることを考えるならば、「防災シール」は犯罪者にターゲットの存在を知らせるものに他なりません。
 「防災シール」を考案した人たちの名誉のために言っておきますが、難問解決に良かれと思って取り組んだ努力は高く評価します。しかし、配慮が足らなかった…
 「防災シール」の負の側面に着眼した犯罪が起きないことを祈ります。この記事で自治体名を明かさないのも、そのためです。もちろん祈るだけではいけないので、議員やマスコミを使って再考させるつもりです。事件が起きてしまってからでは遅すぎるので…
 受験生の皆さんは、この話から複眼的思考の大切さを学んでください。人間は善意で物事を進めるときに負の側面を見失いがちです。愛らしい(?!)なまずちゃんに「牙(きば)」があるかどうかは知りませんが、まず疑ってみることが複眼的思考の基本です。

« こうもりとコウモリ | トップページ | 議論を踏まえて、自由に論じる »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« こうもりとコウモリ | トップページ | 議論を踏まえて、自由に論じる »

カテゴリー

2015年3月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31