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2006.05.02

東大文一後期の復元合格答案

 国公立後期試験が終わってから約2ヶ月、お休みしていたこのblogを再開します。まずは、2006年東大文一後期の復元合格答案を掲載しましょう。
 私の授業をとっていた生徒さん2人が何とか後期で合格したのですが、そのうちの1人が書いたくれたものです。東大文一後期の合格者はたった42人の「狭き門」なので、受験生レベルでの「最高答案」といえます。すべての受験生がこのレベルにまで達していなくても良いのですが、「継続的に学習すればここまで伸びる」見本として読んでください。
 なお、問題と解答例は以下のリンク先(駿台のホームページ)にあります。
 http://www.sundai.ac.jp/yobi/sokuhou/index.htm

東大文一後期・論文Ⅱ 復元合格答案

1

問1 

私は一般公募を避けたことには2つの理由が存在すると考える。第一に、被害者のマスコミに対する反感・不信感が強かったことから、受動的な取材では効果が低かったことがある。つまり、個別的取材によって誠意を伝えてこそ、初めて取材が可能になったのである。第二に、リサーチャー及び編集者との協議の末に一般公募を避けたことから、本書の内容公開を嫌ったと考えられる。一般公募を募るためには本書の目的や概要を公開することが事前に必要になるが、それによって他の出版社が真似することを警戒したのだ。確かに一般公募をすれば証言数の増加に期待できる。だが、筆者の意図が被害者の実像の提示にあるのだから、優先すべきは証言の量よりもむしろ質であろう。よって上記の2つの理由と合わせて、一般公募の実施による利益性よりも回避による利益性のほうが高いと判断したのだと考えられる。

問2

 証言者の実名が用いられたことについて、まず事件による被害の現実味を伝えたといえる。マスコミが加害者のみを詳細に報道する一方で被害者を弱者として一元化する中、被害者の人間性を実名を用いて具体的に描写することで、被害者の生活が失われたことを克明に伝え、事実であることを人々に強調したのである。次に、マスコミ報道に対する警鐘を鳴らしたと言える。マスコミが加害者を攻撃対象に祭り上げ、被害者を無名で無力な弱者として報道に利用する状況に対し、実名による証言者の紹介はマスコミが大衆迎合的な物語を作り上げるのみで、報道内容が事実の一側面を強調したに過ぎないことを暴露したのだ。

問3

 「固定された図式」とはマスコミが加害者を攻撃対象として詳細に調査し、被害者を弱者たる一般市民として作り上げた勧善懲悪の観念のことである。よって、それを外すということは、被害者に関しても個別具体的な情報を提示することで、大衆の事件に対する視線を複眼化して相対的に考えさせたということになる。この現状に挑んだ筆者の持つ意味は大きい。

 第一に、マスコミの報道が作り上げた物語に過ぎないと言うことを明示した。マスコミ報道は情報の浸透によって利益を得るため、大衆迎合的になる側面が強い。大衆の好むように事件の一部を強調し、日々大量に情報を提示するため、大衆はマスコミの報道内容を事実だと思い込みがちで、マスコミが世論形成を行ってしまっていることに気付けなくなってしまうのだ。だが、筆者が被害者に着目した事件の分析を行うことで、大衆の情報判断力向上に貢献したのである。

 第二に、大衆に当事者意識を喚起したといえる。マスコミのパターン化した報道は使い古した物語に過ぎず、事件の具体性は失われがちだ。だが、実名を利用するなど被害者の生活を現実的に描くことで、大衆に事件によって失われた被害者の生活が自分達のものと同じであることを認識させたのである。事件が自分たちにも再発しうる身近なものであることを認知すれば、事件に対する危機感を持ち、再発防止に主体的に取り組む前提になると言える。

2

現代政治において、国際面では従来一致していた軍事・経済・文化の多極化により、政治的影響力の基礎が軍事から経済・文化に分散・多元化しており、国内面でも政治権力が暴力や強制力と一致しなくなってきている。だが、依然として軍拡・軍備競争が継続しており、資本主義や社会主義のイデオロギーが動揺する中、軍縮・緊張緩和を目指した政治的影響力の向上には社会システムのモデル提示が重要だ。日本でも内発的要因に裏づけられ、かつ世界に普遍性をもったモデルをもつべきである、以上のように筆者は主張する。

私は筆者同様に軍縮を必要だと判断し、そのために筆者が国内変革を考察したのに対して、国際政治の様相を検討するとともに方針の提示を試みたい。

筆者は軍拡の要因を、第一に基本的に不信と恐怖の体系である「主権国家」システム、第二に軍拡・軍備競争に既得権益を持つ軍産官学複合体の自己肥大化だと指摘している。

まず前者についてだが、現在でも主権国家体制が継続しているものの、筆者の時期とは異なり、現代世界では東西冷戦体制が崩壊したことに注目したい。東西冷戦体制下の国際政治では、東西の各同盟の下でパワーバランスを保つ勢力均衡方式が主要であったため、軍拡が必然化した。だが、ソ連崩壊で体制が崩壊すると、国際連合の下、一国への侵略を全加盟国への侵略とみなして制裁を発動する集団安全保障方式が主流となった。よって各国が協調すれば、ある国が全国連加盟国を敵に回すことが不可能となるレベルまでは軍縮が可能なのである。私の主張に対し、国際連合の制裁力を疑う意見もあるかもしれない。確かに、体制の崩壊後、米ソが拒否権を発動して安保理が機能停止する状況は減少したものの、イラク戦争等の米国の独断的政治に対し、抑止する機能を果たせなかった。だが、それは各国が国際連合を軽視したからではないだろうか。各国連加盟国が国連決議を最優先とし、米国への制裁も辞さない覚悟を明示すれば戦争を抑止できたはすだ。このような協力姿勢は軍縮にも不可欠となるのである。

次に後者についてだが、前述のように軍縮傾向が強まれば、軍需産業に対する需要が低下して、軍拡に関する既得権益の利益が低下するため、軍産官学複合体の自己肥大化も抑制できる。更に国内発展の主要財源を軍需産業に持つ発展途上国に対し、先進国が技術・資金提供を行えば、更に効果が上がるだろう。すなわち、発展途上国に対して、軍需産業における利益を工業や情報産業などに求めさせると共に、先進国においても情報提供やあるいは資本提供によって新たな需要を創出して、軍事産業の重要性を低下させるのである。現在、軍拡に既得権益が存在する以上、現実的な軍縮には既得権益に変わる新たな利益の提示が不可欠と言えよう。

以上のように軍縮の達成には、筆者の言う国内変革だけでなく、国際政治によって軍拡の不必要性・不利益性を打ち出すことも極めて有効なのである。

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