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2005.02.14

コラム:イメージに導かれる危うい社会

 今回の総選挙では「マニフェスト」が流行語となり、その勢いもあって民主党が躍進した。しかし、それだけをもって、初めて政策が争点となる画期的な選挙だったなどと持ち上げる気にはなれない。結局「マニフェスト」も一つのイメージであり、民主党に投票した人がどれだけ政策を理解し、強く一貫して支持していたのかはかなり怪しいからだ。

 イメージによって人びとが動かされるのは、今に始まった話ではない。ただ、あまりにも簡単にイメージに動かされる人が増えてきた。そして、TVをはじめとするイメージを流す側のメディアがその危うさの自覚、それに基づく自制がなくなってきた点にある。これらのことが、ひどく気になっている。
 北朝鮮による拉致事件報道とそれへの社会の反応をみると、その思いを強くする。不当な事件に憤ることは当たり前なのだが、そこから短絡的に北朝鮮をという国家・国民を憎み、その消滅を切に望む人がなんと多いことか。本人たちは自覚のないまま単純な善悪二元論に陥り、ブッシュ大統領のいう「悪の枢軸」北朝鮮への憎悪を募らせている。
 しかし、落ち着いて考えてみればわかることだが、一つの国家がそんな簡単に何事もなく消滅するはずがない。仮に政権・国家が崩壊するとしても、その際には戦争になるかもしれないし、大規模な戦闘にならなくとも大量の難民が発生することは想像に難くない。いずれにしても日本社会に大きな被害、負担が生じることは避けられない。
メディア発のイメージに振りまわされる人たちは、他者の「痛み」はもちろん、こうした自らの「痛み」に対する現実感や想像力までも失っている。韓国の太陽政策ではないが、今何よりも必要なことは深刻な「痛み」をもたらす悲劇的結末を絶対に回避することであり、結論を焦らず平和的解決の道を探ることである。しかし、その賢明な判断は日本では「弱腰」とのイメージで映るのだろう。
 今回の選挙結果によって促進されるだろう憲法改正についても、イメージ先行の傾向が強く、まったく現実感を欠いている。たとえば、現憲法によってどれだけの不利益が国民にもたらされ、将来生じ得るのだろうか。憲法改正に賛成する人々の多くは「押しつけ」「時代にあってない」などのイメージを口にするが、改正すべき理由を自分の言葉で具体的に説明できる人がどれだけいるのだろうか。
 国家の基本であり社会・個人に大きな影響をもたらす憲法改正までも、イメージで決着しかねない危機的な状況にある。他方、押されっぱなしの護憲の側はイメージづくりに失敗しただけでなく、憲法を守るべき理由をどこまで具体的に主張できたかも疑問である。
 そうした中で、今井一氏が『「憲法9条」国民投票』集英社新書という本で、「最後の選択」の前で立ちすくんではならない提起したことは傾聴に値する。自民党と民主党を合わせた改憲勢力の台頭により、「最後の選択」=憲法改正の国民投票は現実のものとなった。それが今回の総選挙のようにイメージだけで決することのないように、一人ひとりが考え、語る機会を増やしていくことが急務だと思う。(2003/11執筆)

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