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2005.01.31

コラム:温泉の情報公開

 現代は情報公開の時代です。牛乳、ハム、牛肉、鶏肉と一連の虚偽表示が問題になって以降は、どんなささいな表示ミスについても企業は事実を認め、新聞には謝罪・説明の広告がひんぱんに出るようになりました。食品には原産地、原材料、添加物、有機・無農薬の別など、実に詳細な説明がされており、消費者の知る権利は十分に保障されているように見えます。しかし、このような時代にエアポケットのように情報公開が何もされていない分野があったのです。それが温泉です。

 温泉は商品であり、サービスでもあります。ずっとブームが続いていて、最近も都心で巨大温泉施設の開業が相次ぎました。このメルマガの読者にも温泉ファンは少なくないはずです。そんな人は、自分たちが消費する温泉について、どれだけの情報が提供されているのか一度考えてみてください。確かに、温泉に行くと、入り口や更衣室のところに額縁に入った成分表示が掲げられています。そこには源泉の名称、成分、温度、適応症、禁忌症などが記載されていて、見るからに体に良さそうな感じがします。しかし、表示されているのは「あれ」だけです。
 そもそも成分表示は源泉の湧出口の情報でしかなく、源泉かけ流しの温泉をのぞいては、私たちが消費する浴槽の泉質を保障するものではありません。温度を下げるために源泉に水を加えたり、逆に温度が低いため加熱するなど加工された温泉も少なくありません。さらに、温泉のリサイクルとでもいうべき循環式装置を利用した温泉もあります。こうした加水・加熱・循環の有無を、どこにも表示していない温泉施設が多数派です。
 ジュースは全体に含まれる果汁の割合が表示されます。しかし、温泉はいくら加水していても「源泉5%」などと表示されません。また、食品の有機・無農薬のように加工プロセスとして「循環式・塩素殺菌使用」などの表示はされていません。食品には強い関心をもち、不十分な表示に怒る消費者が、このように不十分な温泉の表示に何も言わないのは実に不思議な光景です。レジオネラ症で死者や入院者を出した温泉施設もあります。泉質の優劣が生命や健康に影響を及ぼす場合もあり、食品と同様にわが身にふりかかる話です。
 もちろん加水・加熱・循環式の温泉でもきちんと管理すれば安全ですし、満足できる施設も多くあります。また、温泉という商品・サービスに対する消費者の評価は、施設の立地、雰囲気、料理などを含めた総合的なもので、泉質だけが決め手ではありません。ならば、成分表示だけでなく、泉質も含めた積極的な情報公開をした方が消費者の信頼を獲得できると思います。徹底した情報公開を前提とした、個人の主体的判断を尊重するのが市民社会です。そんな時代に乗り遅れた温泉の現状を変えたいと思い、情報公開制度を利用して、この問題に取り組み始めました。関心のある方は、ネット公開文書館をご覧ください。
(2004/5執筆)

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